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| トンガリロリバーのハイドロプールに立ちこむ老人 | |||||||||
| 1 Hydoro Pool ハイドロプール ハイドロプールで、オイルドハットにオイルドジャケットといういでたちの白髪の老人が、ヘビィウェイティッドニンフを流している。 私たちも、さっきから何度も流してみたが、さっぱりアタリがない。 ここはニュージーランド北島、巨大な虹鱒、レインボウトラウトが釣れることで世界的にも有名な、トンガリロリロリバー。 この川は、日本の琵琶湖ほどの広さをもつ湖レイクタウポにそそいでいる。 レイクタウポは北島のちょうど真ん中あたりに位置し、20あまりの川が周りから流れ込んでいる。 今からおよそ100年ほど前イギリス人入植者たちが、ここ南太平洋の新天地でフライフィッシングを楽しむために、北米から虹鱒の卵を持ち込み、フ化させ、放流したのがそもそものはじまり。 以来、ニュージーランドの大自然に育まれ、虹鱒たちはスクスクと他に例をみないほど大きく、美しく育ったのだ。 持ち込んだ卵が降海型の虹鱒、すなわちスチールヘッドであったという説が後に有力になったのだが、おかげでトラウトたちはレイクタウポを海とみなし、産卵期になるとトンガリロをはじめとする流入河川にサケのように遡上するのだ。 遡上期は、ニュージーランドの秋にあたる6〜7月に最盛期を迎える。 レインボウにつづいて持ちこまれたブラウントラウトは、5月には川を上りはじめる。 その遡上の数が最も多いのがこのトンガリロリバーなのである。 多いときには1つのプールに300もの60cmクラスのトラウトが入るというのだ!! 、、、という事実は後に知ったのだが、私たちが行った季節は10月。 春まだ浅い、ドライフライの釣りには1カ月程早く、遡上してくる魚もそろそろ終わりか、、といった、なんとも中途半端な時期だったのである。 日本を発つ前に現地のフィッシングガイド、カンジ氏に様子を尋ねたのだが、 「そうですねぇ、ムズカシイ時期ですねー。あまり期待できませんよ川では。タウポでのボートからの釣りはできますけど。」 と、つれない返事。 しかし、今をのがしてはニュージーランドなど行くチャンスはもう、ないかもしれない。 行くといったら、行くのだ。 1ヵ月も滞在しているうちには、イイ時だってきっとあるにちがいない。 と、もくもくと暗雲のたれこめる気持ちを振り払い、ここまで来てしまったのだ。 レイクタウポとその流入河川の下流部では禁漁期はなく、一年中釣りができる。 ほとんどがフライフィッシングである。 トンガリロリバーの上流域は道がないので、夏の解禁時にはヘリコプターで飛んで釣りをする、バックカントリーフィッシングという豪華な体験ができる。 今回はいかんせん冬なので、下流部だけの釣りとなる。 とはいっても、トンガリロリバーの下流部だけでもおよそ50ものプールがある。 湖から遡上してきた魚は流れの緩やかなプールで休みつつ、上流の小さな流れ込みに向かって産卵するため、プールでの釣りが効率が良いことになる。 産卵する支流はスポーニングリバーといって、資源保護のため通年禁漁である。 なんとこの各プールにはちゃんと名前がついていて、それを示す看板までたっている。 プールに向かう小道も至るところについているのだ。 そしてその詳細な地図がガイドブックに載っている。 はるばる日本からやって来た英語の喋れない私たちにも、このガイドブックをたよりに釣りができるのである。 |
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| ツランギのビジターセンターの看板。冬はスキー客で賑わうツランギの町 | |||||||||
ここハイドロプールは、ツランギの町の住宅街のすぐ裏手にある。 きのう、オークランド空港で借りてきたレンタカーを返してしまったので、泊まっているロッジからここまで川沿いをテクテク歩いてやってきた。 住宅街とはいっても、ここはニュージーランドの田舎町。家一軒の敷地は広く、道路に沿ってぽつんぽつんと並んでいる。 トンガリロは有名な川だけに、こじんまりとしたフライショップが2軒ほどまぎれているが、人通りはほとんどなく、たまに車が通るくらい。 白い板張りのコテージ風の平屋から、裏庭に茂る木々の緑のトンネルをくぐり抜けると、そこにはトンガリロリバーのまた別の、ブレックファーストプールが流れていたりするのだ。 今朝も、そこにはひとりの老人が、やはりオイルドジャケットを着て、ずいぶん深く立ち込みウェットフライを流していた。 ブレックファーストプールから一つ上流のハイドロプールには、小さな支流があり、その流れ込みではブラウンの大きいサイズがよく釣れるらしい。 が、さっきから私たちにも、ニンフを流している老人にもアタリがない。 プールの脇のベンチにこしかけ、昼食をとることにした。 真っ青な空が写る、澄んだ深い流れをぼんやりと眺めながら、サンドイッチを食べていると、パーキングに白いワゴン車が一台止まった。 またひとり、釣り人がプールの様子を見にきたようだ。 釣り人は手ぶらで、ジャンパーのポケットに手をつっこみながら、辺りをひととうり見て回ると、私たちの前で足を止めた。 初老の背の高いイギリス系白人だが、ヨレヨレのズボンにキャップと、見るからに地元の釣り好きのおじさんといった感じ。 私たちのはいているウェーダーを指差して、 「どこのメーカーか?」と聞いた。 私たちは厚手のネオプレーンのソックスタイプに、フェルトソールのシューズをはいていた。 私が日本製だと答えると 「そのフェルトソールは滑らなくていい。川底の石はよく滑って危ないから。」 とおじさんはいった。フェルトソールなんて、ウェーダーならば当り前なのに変なをこと言う人だな、と思った。 おじさんはグラハムと名のった。 私たちも「アイアム、ミユキ イシカワ アンド、シンイチ イシカワ」と自己紹介すると、 「イシカワサン」とおじさん、言うではないか。 なんでも、ニュージーランド、ナショナルバンクの支店長として、20年程前に日本に滞在したことがあるというのだ。 とはいっても、ずいぶん昔のことなので、日本語が話せるという訳ではなく、カタコトを今でも少し覚えているといった程度。 今はもうリタイアし、一人でここツランギに暮らしているという。 なんだ、ヨレヨレの地元のおじさんかと思ったら、立派な経歴の持ち主ではないか。 娘さんが2人、まだ学生で、ウエリントンとトーキョーにいるという。 グラハムは「この川のもっと上流にいいプールがあるんだが、一緒に行かないか?」と言った。 私はまだサンドイッチを食べながら考えた。 「うーん、外国で知らない人に誘われてついて行ってもいいものだろうか?」 でも、人のよいニュージーランドの釣り師に、家に招かれ、お茶をごちそうになったという話を、友人からも聴いていた。 今日は車もないことだし、これは渡りに船。釣り師に悪い人はいないっか。 と心の中でシンイチと会話をしつつ、サンドイッチを食べ終えて、一緒に出かけることにした。 |
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| 2. Beakaway Poolへつづく The Fishing Story "Tongariro". Copyright(C) 2002 The Funtail Ltd. All right reserved. |
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