Field note 2003
2003 6/27〜7/6 ニュージーランド北島 トンガリロリバー
Text 濱武晃弘  Photo 石川深雪

雨/雨/曇り/時々雨 気温1〜16℃

 本年も昨年に続き、ファンテイル石川ご夫妻に同行しニュージーランド、ツランギへのフライト。現地での釣行は実質1週間、我々夫妻は今年で2回目の釣行となる。昨年は右も左もわからない中、釣果には大変恵まれたが帰国後、ああすれば・・・こうしておけば・・・などと考え巡り1年はあっという間。

 目的地は、北島レイク・タウポに流れ込むトンガリロ・リバー及びその周辺の川。
現地の詳しい情報や内容は2002年以後のフィールドノートを参考にされたし。もっともファンテイルご夫妻に伺うのがベスト。どうも日本ではニュージーレインボーのスポーニング時期の情報が少ない、ファンテイルさんの情報は大変貴重。我々夫婦はこの時期のスポーニングトラウトの経験しかないが、その完全にネイティブな彼らの美しさとファイト、フィールドはゲームの舞台として申し分なし。

 思い返せば昨年以来、何処へ出かけても頭の隅にはニュージーランド。さて今年はというと・・・・実はどうしてもウエットしかもストリーマーで釣りたい。この時期の川では7,8割の人はヘビーニンフにグロウバグやニンフを繋げ、大きなインジケーターで、少し流れが緩くなるチャンネル脇やプールを丹念に探る。トンガリロはもちろん人の手が入っておらず、完全なナチュラルフィールドで瀬やプール、巻き返しが豊富な水量と共に交互に現れ、大変変化に富んでいる。
レイクタウポに流れ込む、トンガリロリバー。産卵を迎えたトラウトたちが大挙して上がってくる。魚のパワー、釣り方は、ほとんどサーモン釣りに近い。

 こんなフィールドでべた底にいる魚とコンタクトをとるには、確かにいいメソッド。その他のヒネマイヤ・リバー、タウランガタウポ・リバー、ワイタハヌイ・リバーなどはトンガリロほど変化に富んでいるわけではないが、トラウトの大きさからは割に合わないほど川幅は狭い。高番手でウエットを行うには少々窮屈な感もある。

 しかーし、昨年見かけた地元のじい様方、ハンチングなんぞ小粋にかぶり杖と犬をお供に川へ現れ、颯爽とウエットを流す。かっこいいーー。しかもあっという間に釣り上げてしまうそのじい様方、恐るべし。きっとあのじいさん、70歳越えてるぜ。おお、これぞ生きるヒストリー。どうもかっこいいじい様は、頑固にウエットスタイルが多い。後で深雪氏に聞いたことだが、彼らはニンフィングをあんなのフライじゃねー(もっと上品に言ってるんだろうが) と言い放つらしい。

 ミーハーなのは分かってはいるが、真似したい。と言うことで、初日からがんばってみた。うっ、分かっていたはずだが、想像以上に流れの押しが強い。思ったようにフライが流れないというより、自分のフライは何処をながれているか把握も難しい。これで底がとれているのか、はたまたフライ先行で流れているのか、テンションがかかりすぎてはいないか・・・・初日は困惑と動揺の中、ノータッチ。

ガイドのグラハム パイト氏と。

馴れないニンフの釣りで、フライをブッシュに引っ掛けまくり、身も心もへとへとに。

ど〜しても、ウェットで釣りたいのだ
 正直、少々目が三角になりそうになる。い、いけない、あのじい様方はこんなことではきっと動揺しないはずだ。威勢を張って動揺を隠す。その後、同行の深雪氏、うちのかみさんはいい魚をキャッチ。うわべ笑いで一緒に喜びつつ、目眩がつる。釣り人は時にあさはかなので、タックルをニンフにチェンジ。このあさはかさが神の怒りにふれ、リーダーは切れるわ、フライはからまるわ、てんやわんや。またもノータッチ。目がかなり鋭角な三角形を描く。ふて寝をしてみたが、何も解決しない。

 翌日、フローティングラインは持たずに出かけると天使が舞い降た。トンガリロの濁りがきつく、ワイタハヌイへ出かけると河口付近で地元のおじさん方、爆釣中。対岸から気持ちの焦りが目に見えるディープウェーデングで、上流からフライを送り込む。流れの強さはちょうどいい、フライが吸い込まれ流れに乗るのが手元に伝わる。ロッドワークと共にフライがチャンネル境目をゆらゆらと動く。チャンネルから少しフライがはずれ水草をとらえたようだ。ゆっくりとリトリーブでフライをはずし、ワンストロークひいた瞬間、ゴンという手応えと共に待望の彼女とコンタクトに成功。一気にロッドをあおると、のってくれた。

 勢いよくラインが走り、8番ロッドが大きくしなる。1年ぶりだ。やばい、楽しすぎる。かみさんと石川氏が対岸から駆け寄ってくれた。「楽しいー?」と聞かれ、「楽しい!!!」と大声で返事をする私はかなり滑稽だ。後ろを通る車もクラクションを鳴らし、地元のおじさん方も囃し立ててくれ、うれしさいっぱいの私は大きく手を振って答える。この引きは羞恥心など吹き飛ばす。おかげさまで無事ランディングに成功。げんきんなもので、こんな時にはみなさんのおかげだと素直に感謝。その後、もう一匹とコンタクトがとれたが、あえなくブレイク。

 私にとってはこの1本は大きい。釣れて分かった、随分と日本を出発する前から緊張していたらしい。力が抜けた。おかげで、この夜みなさんは私のイビキに悩まされたらしい。すいません・・・

カフェのネコ。なんと22才だって!

 前編を読み返してみるとうれしさのあまり、自分のことばかり書きすぎた感がある。少しこの釣行のバックグラウンドについて。長年ツランギに通っている石川ご夫妻のおかげで、昨年は地元の人々と知り合うことができた。今年は、昨年大変お世話になったグラハム・ハミルトン氏のご自宅に宿泊させて頂いた。彼の自宅へ到着すると昨年同様、彼の笑顔は暖かい。

 地元で40年近くガイドをしているパイト氏もわざわざ挨拶に参上。私は昨年、パイトのボートに乗せてもらい、大変いい釣りをさせてもらった。私が初めて見たガイドは、かなりいけていた。ニュージーに来て舞い上がっていたせいもあるが、キャスティング、身のこなしなど、今も私は少々彼にあこがれている。

 グラハム邸での宿泊はと言えば、表現は矛盾するが、大変豊かで質素だ。暖炉を中心に彼のリビングではゆっくりと時間が流れる。一人暮らしと言うこともあり、彼は我々の食事を手際よくクッキング。おそらく気を遣ってくれているのだろう、我々が飽きないよう手をかえ品をかえ、いろいろなキウイーディナーを振る舞ってくれる。どうも向こうの厨房習慣みたいなものが分からないこともあり、皿洗いなどできることをお手伝い。釣行後、喉を酒で潤しながら料理を作る時間もまた楽しい。

 
サザ−ン コンフォート ホームステイのミス ロイス
釣行中日あたり、彼の友人ミス・ロイスの自宅へ招る。彼女の大きな自宅はツランギへ訪れる釣り人や観光客が宿泊、食事をするために準備されているそうだ。日本で言えば、民宿なんだろうが、あまり適切な単語ではない。賄い付きの高級ロッジかな?彼女の料理はなかなかすばらしい。自宅にディナーに招かれる習慣の少ない我々は最初は少々とまどうが、彼女のもてなしですぐにうちとけることができた。

サザーンコンフォートのお客さん用のリビング。暖炉の火が燃え、とっても寛げる。
暖かく迎えてくれた、ミスLois Cole。ネコが大好きで、愛猫のシドニーとウォーリーと。料理がうまく、お菓子づくりも大好き。いただいたチョコレートケーキは美味だった!
庭のプールに面した部屋。ベッドルームは他にも3つ。
Southern Comfort Homestay
35Taupahi Road, PO Box312 Turangi, N.Z.
Tel & Fax 064-07-386-7172
http://www.homestaytaupo.co.nz

 フィッシングガイド グラハム パイト
さて釣りの話に戻ると、お願いしていたパイトのガイドによるトンガリロ釣行の日、私はパイトにウエットにトライしたいがいいか?と尋ねてみた。無論彼はオーケーサイン。ガイドは彼しか経験がないが、ガイドのポイント移動は恐ろしく早い。目指すポイントへ到着すると、皆が入れるポジションとポイントをアドバイスする。その後10分程度だろうか、誰もアタリがないと、さあ移動しようというあんばい。これは結構緊張するシステム。ライントラブルなど起こして、もたもたしていると目の前のポイントを1,2度流して終了・・・・はやい!

 このぐらい口惜しいのもいいと石川氏は言う。そうかもしれない。このあたりの川は毎年流れが変わるらしいし、道路も川沿いには走っていない。海外から訪れる者はポイントにたどり着くまでが大変だし、テンポのいい移動のおかげでいろいろな川の表情を拝める。この日は昨年に続き、かみさんと深雪氏は爆釣。石川氏もいい魚をキャッチ。あこがれのガイドにいいところを見ようとした私は・・・ノーフィシュ。

 前編で私が魚をキャッチした際、私はかみさんに「これで今年はもう十分だ。満足だ。」とのたまわったらしい。確かに、そんな気がする。それは真っ赤な嘘だ。皆が釣れる中、釣れない釣り人の気持ちは釣り人のみぞ知る。しかし慰みはあった。一人のみのキャストが可能なポイントに私が入った。それほど深いポイントではない。明確なチャンネルがあるわけではなく、川幅全体で流れを作るウエット向きのポイントだ。

 数投目のキャスト後大きくターンを開始し、岸際でターン終了。少しの時間をとった後、フライをたぐり寄せようとした瞬間、ラインに大きく左右の揺れが伝わった。内心、ウヒャーヤッター、ここぞとばかり体全体で一気に竿をあおった。川には私一人、みんなは岸に上がって私を見学。ときに釣り人にとってまたとない舞台。と思った思いがまたも怒りに触れ、ティペットとフライは別れ別れ・・・。これがこの日唯一の御慰み。彼曰く、きっとブラウンだそうだ。   「・・・・・・・・・。」  
ガイド歴40年のグラハム パイト氏
今回もびしびし釣ってしまったカミさん
レイクタウポから上がってきたばかりの銀ぴかレインボウ。
Fishing Guide Graham Pyatt
http://www.fishnhunt.co.nz/trout/pyatt.htm
弾丸のようなレインボウを釣ってご満悦。

快心の1ぴきじゃ〜
 さて残りも数日、今日はグラハムも同行し5人でトンガリロ。私は少々意固地気味。無論、本日もウエット!グラハムの案内で、ポイントへ到着。きっと彼は私に気を遣ってくれていたのだろう。ウエット向きのいいポイント。ここは素直に好意に感謝し、早速ウェーディング。ここ数日で、少々川に全てが合ってきた感じあり。タイプ6、9mのヘッドから14,15リトリーブ、下流斜め45度のキャストで対岸の際に届く。体をひねりできる限りのリーチキャスト。
4,5回のメンディング後、イメージ通りにターンが始まる。腰上までのウェーディング。下流には犬と共にかっこいいじい様一人がウエット中。

 私が上流に入ったのを確認し、一流しずつ下流へ移動してくれている(感謝)。気持ちよくウエットが流れていく。予感はしたし完璧だと内心思っていた、時間の問題だ。しかし、プールのエンドが近づいてくる。エンド近くでは例のじい様が流している。ぎりぎりまで彼に近づくのも潔くない。程々のところで、プールから上がる。気持ちはよかったが、何故出ない?いないのか?そんなはずはない。ここ数日の雨で、いい具合に増水した上、濁りもとれている。

 空白の頭で一服していると、かみさんがプールの中程からウエットを流し始めた。トンガリロの流れは強く、女性は膝上あたりが安全だ。彼女は岸際を繰り返し、ターンさせている。一踏ん張り、もう一度上から流そう。私が流し初めて数投後、彼女の竿が下流で大きく曲る。やはりいた。悪いが彼女に駆け寄らず、そのままウェーディングを続行。このままもう一勝負したかった。彼女は無事ランディングできたようだ。

N.Z.といえば、ひつじ
ウェットで掛けた快心のストライク。8番ロッドも大きく曲った!あとはもう、必死です
 先ほどと同様、1投ごとに下流へ下る。ここは、プールだが流れは強い。ラインをかなり出しているせいもあるが、ドラグ設定が弱いとターンの勢いで、ラインが出てしまう。プールの中央にさしかかり、キャスト方向に大きな岩の頭が見え、根がかかりの恐怖。フライは岩の少し上流へ落ちた。祈りながらメンディングを繰り返すと、フライは岩をすり抜け、岩の下へ吸い込まれる。中指は岩下のよれからフライが移動するのを感じた。

 急にラインが重くなった。ゴンというあたりではない。とにかく何かに引っかかったような重み。一瞬ためらったが、大きくあわせると反転する手応えだ。間違いない。ラインが対岸近くまで出て、彼と私の間を強い流れが遮る。ロッドは大きく曲り魚をのせた。この流れの中、取れるのか不安が即座によぎるが、少しずつ後ずさりで岸に近づく。それにしても重い。にこやかに引きを楽しむような余裕はない。必死だったらしい。
どの位の時間やりとりしたのかはよく分からない。以外と短かったのかもしれない。グラハムがランディングしてくれた。よかった・・・最後に1年間イメージし続けていた釣りができた。うそみたい、でも紛れもなく魚はそこに横たわっている。うれしー!!!

その後の記憶はいい加減。
翌最終日は誰も魚とご対面できなかった。
今は気持ちだけ来年へ向いてます。
ようやく釣れた!うれし〜。共に喜んでくれたグラハム ハミルトン氏。

おまけ
 
帰り道のドライブもようやく終了。オークランド空港に到着。「いやー、なんだかんだで、今年も楽しかったですね石川さん。」「ほんと、よかったよかった。」我々の会話は飲んでいるときと同じで、大きな意味など何もない。空港内エスカレーターを皆で上りながら、私はふと思った。立ち食いそばが食べたいナー。ぼそぼそのやつ、そば粉より絶対小麦粉が多いそば。石川さんも同感だそうで。そうこうしてエスカレーターを上りあがると、わっ!そこに、うどん屋出現。うそ!
こんなの去年あったっけ?恥ずかしながらも皆で注文。「天ぷらうどんひとつ、入りマース!」だって。

 食事後、そろそろお時間。みんなそろって出国審査。石川家無事通過。審査官が我々に手招きする。「はい、はい、いま行きマース」厳つい審査官に、夫婦でパスポートを手渡す。鋭い目つきで彼がかみさんを見つめ、視線をパスポートへ落とす、この作業を数回繰り返し、彼は一呼吸ついた。彼は、ため息の後・・・・・・

「パスとメイクが違うぞ!」だって。 
私は「申し訳ございません。お許しください。」と言ったかな?どうだったかな?
N.Z.も左側通行で快適なドライブができる。国道1号線は、ほとんど高速道路。100kmペースで走れる。

2003年のあなたのフィールドノートをお待ちしています。
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