Field note 2003
3本の目ぬき通りが交差するピカデリーサーカス。この近くにHouse of Hardyの本店やFarlow'sがある チューダー調の歴史ある建物は今でも現役のデパート「LIBERTY」。内部の吹き抜けは圧巻だ 花柄プリントが人気のデパートらしく、RIBERTYの入り口はフラワーショップ
2.7.Fri. London Text&Photo 石川深雪

 フライフィッシングが誕生した国、イギリスの生活・文化・歴史を少しでもみじかに感じられたらと、今年もロンドンへ出かけてみた。一年で一番エアチケットが安くなる時期を選んで出かけるため、ストリームでの釣りはほとんどがクローズしているのだが、ポンドならどこでも釣りができるようだ。今回は、ロンドン市内の観光もしつつ、郊外のカントリーサイド「コッツウォルズ」まで鉄道で足をのばし、釣りをした。イギリスの交通機関はあてにならないという事実を身をもって体験。ハプニング続きで楽しい旅となった。

信頼のブラックキャブ
 初日は早朝からアンティークマーケットに出かけた。ホテルを出ようとするとフロントでタクシーを呼んでくれるという。「気が利くマネージャーだこと。」と待つこと10分。「私の友人を頼んだから。」とそのマネージャーが言った。なんでわざわ友人なのかと、いやな予感がしたら案の定、ブラックキャブではなくボルボのワゴンが到着。こちらは5人だと言っているのに、「ま、せっかく呼んでくれたから。」と無理やり後部座席に4人が座り、いざアンティークマーケットへ。目的地までずいぶん遠いような気がしたら、やはり遠回りをされて料金も通常より10ポンドも高かった。がっくり、いいカモにされてしまったのだ。

 本来、ロンドンのブラックキャブは5人が悠々と座れる広さで、人数によって料金が追加になる。ドライバーになるためには厳しい試験があり、皆たいてい親切だし、かなり信頼できる乗り物なのだ。それに5人で乗るとかなり割安になるため、ロンドン市内を短時間で移動したい場合には便利だ。市内の中心部ならかなりの数のブラックキャブが走っているため、早朝や深夜でも、楽に乗ることができる。
 マーケットでガラクタを購入し、帰りは通りかかったブラックキャブをひろい、ホテルへ戻った。
ロンドンの芸術、文化発信地「Covent Garden」。かつては青果市場だったが、現在はマーケットやショップ、カフェがあり、ホールでは芸術家のパフォーマンスも
カフェがあるホールでは観客を巻き込んでオペラの上演中。コベントガーデン
オペラの次は、弦楽4重奏の演奏。高い天井まで響き渡る音色に聞き惚れる。コベントガーデン
ネクタイ専門店のショウウィンドウ

ビクトリア&アルバート博物館 
 荷物を置き朝食をすませ、ロンドンの繁華街へバスに乗って出かけた。ロンドンのバスは赤い2階建てバスで、ロンドン中心地に向かってこれまた相当数の路線がある。中心部に近くなるにつれ、赤いバスが延々と連なる。渋滞しのろのろ進むバスの2階席からは、街並みやショップのウィンドウがよく見える。中心部なら一人1ポンドの料金なので時間さえあれば、座って安く街並みを観光できるよい手段だ。 オックスフォードサーカスからコベントガーデンまで歩き、またバスに乗って「ビクトリア&アルバート博物館」へ。

 1899年にビクトリア女王とアルバート公が改修した、世界の工芸品や美術品500万点を展示したミュージアム。全長13kmに及ぶ館内は、カテゴリーごとに分類され無料で入館できる。 
 この巨大な博物館は、無料で見学できることにも驚いた。大英博物館もそうだが、その管理費は相当なものだろうに。刺繍織物の展示の前には年輩の女性が、椅子に腰掛け、ルーペでじっくりと観察している姿があった。展示品には触れられないのだが、各展示品と同じマテリアルがあり、そちらは「実際にどんどん触って確かめてください」という体験コーナーが随所に設けられていた。何度でも、好きなだけ足を運んで見られるうらやましい環境だ。

 とても一度に見られる規模ではないので、イギリスの生活・文化を歴史に沿って展示したエリアを見学。イギリスの貴族はかつてヨーロッパの中でも特に強大な財産を保有していたというだけあって、その生活用品の豪華さには驚かされるばかり。
 イギリスが栄華を誇った19世紀のビクトリア時代の貴族の生活は、普段は郊外の広大な領地の大きな屋敷に住み、5〜7月にはロンドンのタウンハウスで社交パーティを開き、8月以降は領地に戻って釣りとハンティングを楽しんでいたそうだ。釣りとハンティングも社交のひとつであったらしい。
貴族が使用していた洗面台。水を張ったボウルがくるりと反転し、下に落ちるしくみ 巨大なシルバーのワインクーラー。ワインボトルが楽に20本ぐらいは入りそうだ
Victoria & Albert Museum 何度も訪れないと全部は見られない広さ
フライリールやスポーツタックルが並ぶショップ。価格は高いが、よい目の保養になる。

ポートベロー アンティークマーケット
 翌日は、また朝からポートベロー アンティークマーケットへ。銀製品やボトル、レザーケースなど様々なものが並び、ある程度目星をつけて行かないと、これまた見きれない。道に沿って続く露店やショップの数は2000店以上で、イギリスのアンティーク市場の大きさを実感。
毎週土曜日に開かれる、ロンドンで最も大きなマーケット。常設店は平日もオープン ビルの一角にあるボトルショップ。古い屋敷趾から掘り起こした、ボトルの数々が並ぶ

ジェフリーミュージアム
 午後はロンドンのリバプール駅近くにある「ジェフリーミュージアム」へ。パディントン駅から地下鉄に乗ると2駅目で車両故障のため降ろされ、代替えバスに乗せられた。トラブルには馴れているらしく、駅前にはすぐに3台ものバスが並んでいた。地下鉄ならリバプール駅まで20分もあれば到着できるのだが、混雑した街中を走るバスでは1時間以上かかってようやく到着。2階座席の一番前に陣取ったので、眺めはよかったのだが。

 「ジェフリーミュージアム」は、イギリスの過去400年間のインテリアを時代別に展示したミュージアム。こじんまりとした小さなミュージアムだが、ゆっくりと見学でき、ハーブガーデンに面したカフェでランチやお茶が楽しめる。
 
年代ごとに展示されたインテリアは、すべて本物のアンティーク
ジェフリーミュージアム外観。もとは1800年代に建てられた老人ホーム。住宅街のなかにひっそりと佇む、落ち着いた建物
バスはどこへ?
 帰りもまだ地下鉄は動いておらず、バスに乗ることにしたのだが、どうも行きとは街の様子が違う。通りの歩道いっぱいに延々と露店が並び、食料品から衣類までなんでも売っていた。ごったがえす人々は皆、アラビア系。広場では反戦集会を開いていた。そんな通りの真ん中で、突然バスが止まった。「終点で〜す。」「なに?」しばらく同じバス亭でバスを待っていると、地元のおばさんが「ここは205番のバスは止まらないよ。終点だから。」と言った。「パディントンに行きたいんです。」というと、おばさんは大声で「誰か、パディントン行きのバス知ってるかい?」とバスを待つ人達に聞いてくれた。
 
 通りを渡って向かい側のバス亭から乗ればよいと言うことだった。パディントン行きと確かに書いてある205番のバスに乗ると、バスはまたもと来た道を走り出した。「この道、さっき通ったよね。」などと、不安に思っていると、バスは先ほど乗り込んだリバプール駅まで戻ってしまった。が、今度は降ろされることなくそのままパディントンへと向かった。どうやら同じバスでも方向を間違えたらしい。後で地図を確認したら、そのアラビア人街はさらにイーストエンドの「ホワイトチャペル」というエリアだった。
ハーブガーデンを眺めながら、ランチ。本日のお薦め、そら豆のスープとパンがおいしかった
いきなりアラビア人街に迷い込んでしまい、びっくり。中東に来てしまったようで、とてもロンドンとは思えない光景だった。ちょっと、歩いてみたが、観光客はまったくおらず、かなり浮いた状況に
ロンドン名物2階立てバス。

DONNINGTON TROUT FARM
 最終日はいよいよ、今回のメインイベントである鉄道でカントリーサイドへ出かける旅。パディントン駅から西へおよそ200km、2時間。途中、オックスフォードの駅で、またまた車両トラブルにより1時間停車。コッツウォルズ地方の「モートンインマーシュ」という駅で降りて、タクシーでまずはDonnington Trout Farmへ。

 牧歌的な風景が広がる中に釣り場があり、すでに4人が釣りをしていた。止水の小さなポンドで水深は浅く、藻が茂っている。早速、釣りをしようとチケットを求めると、この釣り場のリミットは6ロッドまでで、申し訳ないが5人は無理だという。「3時間もかけてロンドンから来たんです。」と交渉すると、釣り場の人は驚いた様子で、すでに入っている釣り人の許しをもらって3ロッドだけ入れてもらえることになった。
 インターネットで調べていったのだが、思っていたよりも小さな釣り場でまさか6人までしかできないとは。確かにイギリスでは、川もしかり、釣り人の人数制限はどこでもあることなのだろう。快適な釣りをするためには、やはり必然的なルールか。

 5人で交替で釣ることになった。半日チケットで3匹まで、10ポンド。およそ2000円だ。ここではキャッチしたら、リリースしてはいけないシステム。6番シンキング インターミディエイトラインか、フローティングラインの先端にシンキングリーダーをつけニンフをリトリーブ。冷たい風の中、11時から3時まで釣りをして、35cm前後のレインボウとブラウンが全部で8匹釣れた。釣り場で有料でさばいてくれると言うことだったが、またロンドンまで持ち帰るのも大変なので、釣り場で販売しているスモーク用の魚として貰っていただいた。調理場をのぞくと、サイズが小さいものでも皆、おいしそうな赤身だった。
上)静かにアプローチしないと、魚が逃げてしまう
上)時折雨が降ったかと思うと、太陽が一瞬顔を出した
Donnington Trout Farm
Near Upper Swell
Stow on the Wold
GL54 1EP
England
Telephone Cotswold (01451) 830873
上)コンディションのよいレインボウが釣れた
左)水流をおこしてトラウトの養殖をするため、ヒレがしっかり発達する
しっかり2匹釣れて、ご満悦の濱武ご夫妻

Stow-on-the-Woldで観光遭難?
 釣り場でタクシーを呼んでもらい、すぐ近くの「ストウオンザウォルド」村へ。14世紀頃羊毛の集散地として栄えた村々が、当時の面影を残したまま現在は観光スポットとなっている村のひとつだ。この日は日曜日ということもあってか、数すくないタクシーも忙しいらしく、釣り場に迎えに来てもらうのにもやっとで3時すぎに村に到着。まずは、釣り場で教えてもらったパブで遅い昼食。冷えきった身体をスコッチや紅茶で温めた。

 さて、せっかくたどり着いたストウの村だが、観光もそこそこに、駅まで帰る手だてを考えなければ。バスはほとんど走っておらず、観光客のほとんどはマイカーだ。さっき、釣り場から送ってもらったタクシーも後は予約でいっぱいで、他をあたってくれということだった。ツーリストインフォメーションに行くも、日曜日のためクローズ。あたりはうっすらと暗くなりはじめ、観光客も少なくなってきた。みやげもの屋で買い物をして、タクシーを呼んでもらうよう頼んだ。しかし「タクシーはいっぱいで6時まで来られない。」という返事。「もう5時で店を閉めるので、あとは公衆電話で自分で呼んでみてください。」と、店の人は言った。

 なにしろ、鉄道も1時間に1本程度しか走っていない田舎町。とにかく、駅まで行って今夜中にロンドンに帰らなければ、明日の帰りの飛行機に間に合わない。公衆電話などどこにも見当たらないし、流しているタクシーなどまったくなし。みやげ物屋は5時で次々に閉まっていく。だいたい、自分たちで電話したところで正確に用件を伝えられるのかも不安なのに。遅くまで開いていた別のパブにすがる思いで飛び込んで、タクシーを頼んだ。
 ここで、ようやく「5時半なら行ける」というタクシーをつかまえることができ、なんとか6時3分の列車に乗り込むことができた。ビールを注文するお客さんを待たせてまで電話してくれた、パブの女性に感謝。帰りは、パブでタクシー待ちの間に飲んだスコッチで、皆、千鳥足になっていた。

 やはり、郊外へロンドンから日帰りで行くのは、かなり慌ただしいものになってしまった。ストウの村にもB&Bが沢山あったし、次回はゆったりとカントリーサイドとストリームフィッシングを楽しみたいものです。
上)食事がおいしいと釣り場で薦められたパブ「ベルイン」村のはずれにある
上)昔ながらの建物におしゃれなショップが並ぶ、ストウの村。タクシーを探すのに大わらわで、ゆっくり見る暇もなく、、、
ホテルの窓から眺める、夜明けのロンドン

2003年のあなたのフィールドノートをお待ちしています。
詳しい募集要項はこちらをお読みください。


Top page

Copyright(C) 1996- The Funtail Ltd. All right reserved.